「平成26年度の研究」ページ  ◇◇◇県外視察◇◇◇

大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校視察

OBF外観

視察日時・内容

日 時  平成26年10月10日(金)8:50〜11:00
応対者  首席 秋本誠一先生
訪問者  土岐商業高校 鍵谷ひとみ 堀井 篤 水野直樹

視察内容
@「ビジネス基礎」(「ビジネス・アイ」)の授業見学
A「課題研究」の授業見学
B授業や教育課程についての説明
C施設見学

OBF看板

大阪ビジネスフロンティア高等学校(以下OBF)について

 東商業高校、市岡商業高校、天王寺商業高校が統合し、24年4月に開校したグローバルビジネス科単科の商業高校である。生徒数は930人。大阪市立大学、関西大学、関西外国語大学など5つの大学と連携し、高大7年間を見据えた教育を行っている。今年度初めての卒業生を出す同校だが、3年生の75%が進学を希望しており、そのほとんどが大学進学希望者である。英語、情報、会計の3要素に重点を置いており、検定においても、全商検定取得に主眼が置かれ、情報においてはプログラミングの学習は3年次選択した者2単位のみ、簿記は日商簿記2級まで、と進度を制限し、英語と探求型学習に力を入れている。探求型学習とは、1年次は「ビジネス基礎」(「ビジネス・アイ」)3単位、2年次は「ビジネス・マネジメントT」3単位、3年次は「ビジネス・マネジメントU」3単位、「課題研究」3単位で、連携大学教授による講義や会社経営者などが実社会を伝える講義などが年に数回組み込まれており、生徒はビジネスについて知識を得て、課題について自ら考え、考えをまとめ、発表する機会が多くある。

ビジネス基礎授業

@「ビジネス基礎」(「ビジネス・アイ」)の授業見学

 1年6組の大中先生の授業を見学させていただいた。ウェブ社会(ウェブ・ライフスタイル、ウェブ・ワークスタイルが普及した社会)について学習していた。「ビジネス・アイ」のテキスト(市販・連携している関西大学廣瀬教授著)とワークブック(OBFの先生方で作成)を用いていたが、ほぼ先生の問いかけと生徒の回答で進んでいく授業であった。普段から生徒と近い関係で授業を行ってみえるようで、生徒は自由に発言していた。「ビジネス・アイ」のテキストは、各章に課題が示されており、またタイムリーなコラムが充実していて、生徒の興味を引き、生徒が考えるような授業を促す内容となっているが、図や絵がほとんどなく、教師側の教材研究や工夫がなければ授業は成立しない。先生の技量によって授業に差が出る教材である。

テキスト

 

テキスト【使用しているワークブック】

課題研究授業

A「課題研究」の授業見学

 3年7組の秋本先生の授業を見学させていただいた。OBFの課題研究は3年次3単位、1クラス単独教師2人担当で行われている。探求型授業のまとめの位置づけである。個人でビジネスに関するテーマを決めて1年間研究するスタイルである。年4回中間発表や発表が行われ、最終的に400字詰め原稿用紙10枚に論文形式、手書きで研究のまとめを行う。今回は中間報告の発表をしていた。プレゼンテーションの指導はされていないということであったが、生徒たちはパワーポイントでの資料も適切に作成しており、自分でまとめた原稿によって5分程の発表を行っていた。

B 授業や教育課程についての説明

 「ビジネス基礎」の授業は、1年次に3単位行い、主に「ビジネス・アイ」のテキストとワークブックを用いて行われている。その続きが2年生、3年生に学習する「ビジネス・マネジメントT・U」各3単位であり、その授業も「ビジネス・マネジメント」というテキストを用いている。これに3年次「課題研究」3単位を合わせ、探求型学習を行っている。
 「ビジネス・アイ」のテキストは、会社、起業、マネジメント、会計など様々なテーマがあり、内容が詳細に書かれていないため、授業は教師の技量で広がりや深みが増すことになる。教師は8クラス4人で担当するように授業を組んでいる。評価については、テキストに基づいて、教師が各テーマを分担して定期テストは作成するが、内容は難しいので、テストは4割、日常(授業態度、ワークブック、成果物など)が6割となっている。

施設見学

施設見学

C 施設見学

 「ビジネス基礎」(「ビジネス・アイ」)も「課題研究」も特別教室で行われていたが、教室の半分が通常教室のように机が入り、黒板(ホワイトボード)があり、またプロジェクターが設置されていて映像や教材提示ができる環境であり、あと半分がパソコンが40台入ったパソコン教室となっている一体型の特別教室である。「ビジネス基礎」の授業は、前半机、椅子の教室で行い、後半教室内を移動してインターネットで調べ学習を行っていた。情報処理で使用するパソコンしか入っていない教室以外に、このような特別教室が6教室ほどあるということで、「ビジネス基礎」の授業全てがこの一体型の特別教室で行うようになっている。その他、2階に体育館も組み込まれた7階建ての校舎には、400人収容できる多目的ホール(ここでは、高大連携している大学の教授から「ビジネス基礎」「ビジネス・マネジメント」は学期に1回のペースで講義が行われる。その他企業の方などの講演もある。)、500台のパソコン、情報機器がコンパクトに整備されフラットで全教室内見渡すことができる総合実践室、HR教室にも鍵がかかるなど、素晴らしいものであった。

◇ 視察を終えて

 今回特色ある「ビジネス基礎」の授業をしているOBFの授業を見せていただいたが、「ビジネス・アイ」のテキストを用いた探求型授業であり、教師の方法次第で広がりも深みも増す。そこには評価の問題がある。本校でも1年生全クラス「ビジネス基礎」の授業は同じ定期テストで行うこともあり、忠実に教科書の学習をした方がテストの成績が良くなるという現象は否めず、教師側がオリジナルの教材や方法を継続して用いることが難しい。ビジネス基礎は商業科目の基礎となる科目であり、抑えておくべきビジネスの知識、経済の基礎知識などはあるが、簿記や情報処理のように知識や技術を学ぶことに追われる授業ではない。この「ビジネス基礎」を有効に、生徒がこれから学習することの意義や、将来関わっていくビジネスの世界について考えながら、生き生きと意欲を持って自ら学べるように、OBFの「ビジネス・アイ」の授業は大変参考になった。評価の仕方も参考にし、今後「ビジネス基礎」の授業展開を、抑えるべき知識というベースの上に、もう少し柔軟に自由に、生徒が活動できるような授業に変えていくべきである。