各単元における授業展開例の研究
「単に知識や技術の習得にとどまらず新聞、放送、インターネットなどの活用、経済活動の具体的な事例を取り上げたケーススタディや
グループでの考察などを通して、経済社会の動向に着目させるようにする。」という改訂点に着眼し、「(4) 経済と流通の基礎」「(5) 企業活動の基礎」
の学習指導案(授業展開例)と、メディアの活用、ケーススタディやグループでの考察ができるような教材の作成を行う。
評価基準については、変更された観点別評価基準の単元別のねらいに即し、無理なく生徒の学習状況を的確に評価できるよう、評価の観点を
精選するとともに、「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努力を要する」の3段階で評価できるようにする。
なお、研究には教科書「ビジネス基礎(実教出版株式会社 商業301)」を使用した。
大項目「経済と流通の基礎」の項目「経済の基礎」の授業展開例
第2章 経済と流通の基礎 第1節 経済のしくみとビジネス (3)経済活動の基本的な考え方
学習指導案
1.目 標
- 生産要素の希少性やトレード・オフなど、経済に関する基礎的な知識を身に付ける。
- 希少な生産要素から最大の利益を出すにはどうしたらよいか仲間とともに考察しようとする。
2.生徒の活動
- 「経済とは何か」を自分の言葉で説明する。
- 「スマホを製造するには何が必要か」という問いかけから、様々な必要だと思うものを挙げ、それら生産要素別に分類し、その希少性について理解する。
- 挙げられた条件からスマホの製造販売についての意思決定をグループで行い、トレード・オフ、機会費用について理解するとともに、自分の考えや仲間の考えをまとめ発表する。
3.検 証
- 「経済とは何か」「スマホを製造するには何が必要か」においては、生徒は反応も良く、活発な意見も出た。生産要素との希少性について理解が深まった。しかし、挙げられた条件から
行う意思決定は、条件自体を理解させるのに時間がかかったので、その点を改善してワークシートを作成し直した。トレード・オフ、機会費用については説明の中で十分理解できたように思う。
- 生徒は活発に授業に取り組めた。
第3章 経済と流通の基礎 第1節 経済の基礎 1 経済生活と経済のしくみ
※ 本章のみ教科書は東京法令出版
学習指導案
1.目 標
- 商品およびサービスのおおまかな概念を理解させる。
- 経済の3主体の相互関係について理解させる。
2.生徒の活動
- 自分たちが生活していくためには何が必要か、それを手に入れるためにはどのような方法があるかを考え、発表する。
- 自分たちが生活する上で必要なもののほとんどは、企業から購入していることを理解し、どんな企業があるのかを発表する。
- 商品やサービスの意味、サービスの特性について理解する。
- 一国の経済が、3つの経済主体で構成されていることを理解し、それぞれ役割および相互関係について考える。
3.検 証
- 生徒の授業後の感想からは、「今回の内容が身近なことで、たくさん知ることができたのでよかった。」「プリントに分かり易く重要なところがまとめてあったので、とても理解しやすかった。」など、机上の活動については積極的に取り組めたように思う。
- 反面、参観された先生からは、こちらの説明が多かったので、もう少しグループ学習や視聴覚を利用した授業展開などの工夫が必要であると意見をいただいた。
- この章の導入だったので、商品やサービスの説明に時間を使いすぎ、肝心の経済主体まで進めることができなかった。商品やサービスは目標のとおり簡単な説明で済ませなければいけなかった。(できなかったところは、次の授業で実施した)
大項目「経済と流通の基礎」の項目「ビジネスの役割と発展」の授業展開例
第2章 経済と流通の基礎 第2節 社会の変化とビジネスの発展 (4)ビジネスの課題とビジネスチャンス
学習指導案
1.目 標
- 環境、食料、エネルギーの問題は人々の共通の課題であることを理解し、具体的に課題を解決する方法をビジネスと関連して考えようとする。
2.生徒の活動
3.検 証
- 環境問題、エネルギー問題、食料問題については中学までに学習しており、生徒たちはそれらの問題を解決しなければならないと分かっている。
ただし、慈善活動として行動するという考え方になっている生徒が多く、ビジネスと結び付けられるような発想は少数であった。
- 諸問題に対して解決するための手段や具体的な方法を考えることは難しく、わかりやすい事例や資料などスムーズに生徒が考えられる教材を準備しておく必要がある。
- 最終的に社会にある問題は企業のビジネスチャンスであり、問題を解決することが企業の存在意義で社会的責任であることを伝えたいが、「諸問題について考えることが大切だ」で終わらないようにしたい。
大項目「企業活動の基礎」の項目「資金調達」の授業展開例
第4章 企業活動の基礎 第2節 資金調達
学習指導案
1.目 標
- ビジネスに必要な資金には、運転資金と設備資金があり、企業の方針や信用度に合った様々な資金調達があることを理解させる。
2.生徒の活動
- ワークシート記入、グループ討議・発表、ケーススタディ
3.検 証
- グループ討論により自分の意見を発言する機会や他人の意見を聴く機会を多く設けることができた。
- 生徒全員が知っている、スティーブ・ジョブズのアップル社起業時と起業後の「資金調達」を考えるケーススタディにより、生徒のより深い知識の定着につながったと感じた。
大項目「企業活動の基礎」の項目「企業活動と税」の授業展開例
第4章 企業活動の基礎 第3節 企業活動と税 (1)企業が納める税
学習指導案
1.目 標
- 消費税の概要としくみ、国税の消費税と地方消費税の割合について理解する。
- 消費税をはじめとする税金の使途についても関心をもち、生活に結び付けて考察する。
2.生徒の活動
- ワークシートを使い、対話、発言をしながら学習する。
大項目「企業活動の基礎」の項目「雇用」の授業展開例
第4章 企業活動の基礎 第4節 雇用 (1)雇用の意義,(2)わが国における雇用の特徴
学習指導案
1.目 標
- 賃金、雇用、失業について理解する。
- 雇用の特徴について理解するとともに、自分の考えをまとめ発表する。
2.生徒の活動
- ワークシートや資料を使って学習する。
- 情報収集ツールを活用する。
大項目「企業活動の基礎」の項目「企業の形態と経営組織」の授業展開例
第4章 企業活動の基礎 第5節 企業倫理
学習指導案
1.目 標
- 企業不祥事について各立場から考察するとともに、自らの意見を発信しようとする。
- 企業不祥事の内容について関心をもつとともに、その原因を積極的に考察しようとする。
2.生徒の活動
- ワークシートを活用し、告発する側、告発された側、消費者の各立場からの心情を考える。
- 各立場からの意見をまとめ発表する。
- 倫理観や企業の社会的責任について考える。
3.検 証
- 丁寧に時間をかけて行いたい単元であるが、内容が盛りだくさんのため、1時間で実施しようとすると時間が足りなくなってしまう。
- 教員側が、ワークシートの内容に対して補足説明を入れたりするなどの工夫をすることで、生徒はより内容を理解できるようである。
- 生徒の意見交流が必要な内容であるが、活動の場をもたせようとすると、時間に追われてしまう。