10周年記念!文学座による教員向け演劇ワークショップ講座

本日は教員向けに演劇ワークショップ講座をしていただきました。初めは文学座の西川さんから講話をしていただき、後半は「たこ八」という生徒がワークショップで体験する予定のゲームを教員も実際に体験してみました。

講話の中で心に残った言葉が幾つかありますので紹介します。

・ある高校で演劇ワークショップを2時間やったところ、途中まで寝ていた生徒が起き上がって参加してきた。コミュニケーションゲームにを通じて講師に親しみを覚え、「講師の先生の話を聞いとけ」とその生徒が他の生徒に言ったことに驚いた。他にも、入学したときに体が大きくて周りから怖がられていた生徒が、意外とそうではなかったとワークショップを通して分かったということもあった。このように、横のつながりができていった。嫌なことを言われて嫌だと自分で真正面から向き合って言うことができるようになった生徒もいた。

・一人でも多くの高校生が社会に出て活躍できるようになって欲しい。大切なことは、自分よりも他者に集中してどのようにコミュニケーションをとっていくか。演劇では他者(相手)と場に対して集中することによって、相手との間に交流が生まれる。現代の社会は利己主義になっている。まず自分を大切にしましょうという考え方である。けれども、その反対の言葉で利他主義という言葉がある。相手を大切にすることによって相手が変わり、自分も変わることができるので、その方がいいこともある。

・演出家と俳優の関係と、教員と生徒との関係は少し似ている。演出家や教員は「こうしたい!」という思いを持って行動する。しかし俳優と生徒が主体的に行動し、何かを生み出すことができる雰囲気を作っていくことも大切なのだ。演出家や教員は「相手を夢中にさせること」「相手を愛すること」「有機的と無機的を分けること」がとても大切である。演劇でも果敢にやってする失敗は価値のあることとして扱う。遊び心が含まれていてもいい。「遊ぶ」と「ふざける」は全然違う。教室に行くと、みんなビシッと座っていることが多いけれど、2パターンある。先生が怖いからじっとしている場合と、先生が自分のことをよく見ているからビシッとしている場合。後者は見られていると実感して、生徒一人一人の承認欲求が満たされているからなのである。

後半の「たこ八」ゲームは子供心に帰って全力で楽しみました。西川さんが「うまくいっているときよりも、間違えたときのほうがなんかかわいくていいんだよね。アクションを起こすことによるリアクションがよりその人の本性を引き出すんだ。」とおっしゃいました。

1年生演劇ワークショップ

不破高校では毎年、1年生対象の演劇ワークショップを実施しています。目的は以下の三点です。

1 多様な生徒同士の、他人と自分自身を認識する力を育成すること。

2 ワークショップにおいて、コミュニケーションの基本である他者理解能力を高めること。

3 普段の学校生活の中では見出されにくい生徒の長所を生徒同士が発見することにより、自己肯定感を育むこと。

講師として文学座のみなさんにお越しいただき、年に3回実施しています。今年で10周年を迎える不破高

校での演劇ワークショップの取り組みは、日頃やったことがないことを中心に生徒に取り組ませます。例え

ば、人前で大きな声を出すこと、相手の目をじっと見ること、などです。具体的にはエア縄跳び・エア手裏

剣、大きな声で名前を叫びながら1つアクションをするということをしました。エア縄跳びでは、実際には縄

が見えないので、回し手の腕の動きに合わせて動くしかありませんが、縄がうまく想像できないグループは、

飛んでいる側の動きがばらばらになってしまいました。繰り返すうちに少し動きがそろうようになりました。

また、大きな声で名前を叫ぶという活動では、緊張や恥ずかしさで小さな声になったり叫ぶのを躊躇したりす

る生徒もいました。しかし、なかなか言えない生徒に対しても周りの生徒がとっても温かく、「頑張れ-!」と

声をかける素敵な姿がありました。

演劇ワークショップでは、ゲームを通して相手の新しい一面を知ることができます。今日は「ピンポンパ

ン」というゲームをしました。初めてするゲームなので、ルールを理解できた子が分からない子に優しく教え

たり、アドバイスをしたりしていました。また間違えたときにもお互いの顔を見て笑顔がこぼれる、そんな素

敵な時間でした。

見ていた教員が思うことは、演劇ワークショップの時間は授業の時間だけでは見ることができない表情を見たり、聞くことができない声色を聞いたりすることができる素晴らしい時間だということ、教員も生徒も未だ知らない一面を相手に知ってもらうことができる良い機会だということ、この機会を通して自分を変化させることができるかもしれないということです。もしかしたら同じように思った生徒もいるかも知れません。以下、生徒の感想です。

・大きな声を出すのは難しいことに改めて気付いた。みんなが言うスピードと大きさが上がると(自分も)つられることが分かった。

・人の話は、よく聞かなければいけないということが改めて分かりました。演劇において集中力と想像力が大切で、縄跳び・手裏剣などは「どのように見えるか」を想像することが大切ということを知りました。名前呼びと「ピンポンパン」では、タイミングや団結力が大事ということに気付きました。また、演劇をする人は見る人がその場にいるような臨場感を出すことが大切ということを知り、おもしろいと感じました。

・自分の反応速度が遅いのに気付いた。みんなで想像力を働かせて遊ぶ縄跳び、自分の主張するポーズ、速く反応するピンポンパンゲームなど、面白いゲームが豊富で楽しかった。

・俳優さんたちは人を笑わせるのがうまく、最初はその空気に慣れることができず困りましたがだんだんやっていくうちに慣れ初め、最後は楽しい気持ちで終わることができました。演劇の人達には人付き合いが苦手な人や恥ずかしがり屋な人がいることを知って驚きました。7月にも演劇ワークショップがあるので楽しみにしています。

・最初から最後まで緊張していた人もいたけど、ほぼ後半になるにつれて一人一人がオープンになっていったかなと思いました。名前を呼んだりするのは、恥ずかしがらずに真剣にやったら多分もっと面白いと思いました。ピンポンパンゲームが一番楽しかったです。またやりたいと思いました。次回は何をするのか楽しみです。

・初めて演劇ワークショップをやってみて、最初は恥ずかしい部分もあったけど、だんだんと心が慣れて場になじめるようになり、楽しくできてよかったです。講師の方々も面白くて、元気な方々だったので、自分も元気と勇気をもらえてよかったです。

・仲間とのふれあいがとても大切な時間だと思った。普段見られないみんなを見られてよかった。たくさんいろいろなことをやってみて、みんながとても楽しそうにやっていたので、自分まで楽しくやれた。