当校での医療的ケアの取り組み

1980 年代後半から、肢体不自由特別支援学校に在籍する児童生徒の障がいの状態は、年々重度重複化していきました。これに伴い、教育や生活の場における医療的対応のニーズが著しく増えてきています。このような状況の変化の背景には、以下のようなものが考えられます。

① 医学・医療技術の進歩、特に重症心身障がい児医療の進歩
② 高齢化社会等に伴う在宅医療諸施策の推進
③ ノーマライゼーションに基づく在宅生活の理念の推進(QOL の向上)

痰の吸引、気管切開部の管理、経管栄養、導尿などの、日常生活に必要な医療的な生活援助行為を、「医療的ケア」と言います。

「医療的ケア」の教育的意義は、次の三つの側面で考えられています。

【身体面】
◇医療的ケアをとおして、健康の維持・増進を図ることにより、心身の安定、授業への主体的、積極的な参加が可能になる。
◇医療的ケアをとおして、児童生徒が心地よい身体の状態を知ることができる。さらに、そういう状態を、自ら求める力を育てることになる。
◇医療的ケアをとおして、教師は児童生徒の身体の状態をより細かく正確に理解することができ、指導上より正確な目や判断力を培うことができる。

【心理面】
◇児童生徒が心地よい状態で学習できることにより、情緒の安定が図られ、教師などに対して安心感・信頼感がもてるようになり、教師などとの信頼関係が深まっていく。
◇様々なことに対して、意欲的にかかわろうとする環境を準備できる。
◇児童生徒の心理的側面を、より正確に理解することができる。

【社会面】
◇登校日数が増え、教育を受ける権利の保障にもつながる。
◇より多くの友達や教師とかかわるようになり、経験の拡大、体験の増加につながる。
その結果、児童生徒の教育の可能性も大幅に広がる。