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第67回全国盲学生短歌コンクール


 短歌コンクールは、昭和32年に岐阜盲学校高等部生徒会が「生徒会活動の閉塞感を打破する手ごたえのある活動はないか」と国語科教員に相談したことを契機に始まりました。(第60回記念誌)当初は、中部地区盲学校の生徒会に呼びかけ、次いで全国に対象を広げていきました。
 今年度も選者については、岐阜県歌人クラブ顧問並びに中部日本歌人会顧問の後藤左右吉先生に引き続きお願いしました。応募総数は296首、応募者は194人、学校数は17校でした。応募された中から特選1首、入選10首、佳作24首が選ばれました。各校に入選歌集を送付し、特選及び入選作者にはメダルと賞状を、さらに、特選作者には副賞として選者の後藤先生直筆の色紙も併せて送付いたしました。また、令和2年度よりペンネームでの応募を受け付けております。
 なお、当コンクールの運営経費は、愛盲シールの売上金から助成していただいております。

【特選】1名


帰り道「空がオレンジ」と友が言う夕暮れの空に手を伸ばしてみる
神戸市立盲学校         普二  鈴木 美緒(すずき みお)

【評】 学校帰りなのだろう。一緒に帰る友達が、空の色が今オレンジ色だよ、と教えてくれたのだ。ああ、そうか、オレンジ色なんだ、と夕暮れの空に手を伸ばしてみる作者の鈴木さん。きっと心の中いっぱいにオレンジ色が広がったことだろう。さりげない一瞬をとらえて、見事に一首にまとめているのに感心した。事柄だけを詠んでいるようだが、そこには深い感動がにじみ出ていて素敵な一首となっている。特に下の句「夕暮れの空に手を伸ばしてみる」に個性的な感受が出ていて素敵である。

【入選】10名


楽しみだ卒業したら一人暮らしまぜごはん作り一人で食べる
北海道旭川盲学校        中三  菅原 宏哉(すがはら ひろき)

【評】 一人暮らしができるのが、よほどうれしいのだ。しかも好物の「まぜごはん」を作って一人で食べたい、と具体的に詠んだのが、いい。

世の中のバリアフリーは進めども今日(けふ)もつまずくこころの段差
神奈川県立平塚盲学校      保一  川口 裕紀(かわぐち ゆうき)

【評】 四十九歳の作者、さすがに深い内容の作品である。「こころの段差」に今日もつまずいた、というのだ。嘆きと叫びが重く響いてくる。

いつもはねふざけているけどありがとう尊敬してます大事な兄貴
愛知県立岡崎盲学校       中三  吉村 志恩(よしむら しおん)
【評】 ストレートに気持ちを吐き出したのが、いい。口ではなかなか言えないことも短歌にしてみるといい、という見本のような作品である。

涼しげな尾鷲の川は夏風に吹かれきれいな水面(みなも)が動く
愛知県立名古屋盲学校      中二  五味 龍仁(ごみ りゅうと)
【評】 見たものをきっちりスケッチしたのが、いい。夏風に吹かれて動く水面に着目して、そこに焦点を当てているのだ。

車からベルトをしめろと怒られて慌てるほどに伸びないベルト
愛知県立名古屋盲学校      普二  畝本 惇史(うねもと あつし)
【評】  最近の車はいろいろ指示をしてくれるが、それに応じるわれわれは結構大変だ。作者の慌てる様子が見えるようだ。

振動が広く伝わる全身に数年ぶりの打ち上げ花火
愛知県立名古屋盲学校    普三  高橋 秀静(たかはし しゅうせい)
【評】 コロナ禍を過ぎてようやく復活した花火大会。振動が全身に伝わる打ち上げ花火、喜びを全身で感じているのだ。

水道と小鳥の音が好きですよあったらいいな音、鳴るボタン
岐阜県立岐阜盲学校       小四  岩越 愛奈(いわこし あいな)
【評】 音に敏感な作者だから詠めた作品だろう。好きな音、聞いてみたい音、そんな音が自由に生まれるボタンがあったら、という願いなのだ。

親友と一緒に行った夏祭り彼女の話はもうやめてくれ
岐阜県立岐阜盲学校       普三  牛タン(ぎゅうたん)
【評】 おもしろい。親友が「彼女」の話ばかりするから、せっかくの夏祭りも面白くない作者。心情がよく出ている。

僕の手は音を奏でる文字を読む世界につながる大切な手
広島県立広島中央特別支援学校   中一  坊田 惣祐(ぼうた そうすけ)
【評】 「手」に対する格別な思いが詠われている。そうだ、世界につながる「手」なのだ。こうした個性を、どんどん詠んでほしいものだ。

大都会ここが噂の東京かまるで迷路だ人が多くて
広島県立広島中央特別支援学校   普一  桝沢 桜香(ますざわ おうか)
【評】 まさに、「発見」のある作品だ。自分独自に、自分の体感を詠んでいるのが、いい。上の句も率直で、おもしろい。
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